2019年1月、マグノリア室内管弦楽団 代表のTが初めてウィーンを訪れました。その際に見聞きしたものを写真中心でご紹介していきます。
生涯に70回以上引っ越したとされるベートーヴェンですが、彼が住んだ家のうち、現代まで残され、かつ内部が公開されているものは限られています。そんな中で今なおウィーン市内に現存し、博物館となっていて、ベートーヴェンの生活を偲ぶことができるのが「パスクァラティハウス Pasqualatihaus」です。
18世紀末に建てられ、家主のパスクァラティ男爵の名で呼ばれるこのアパートは、ウィーン中心部を取り巻く環状路「リング」の北西部、ショッテントーア Schottentor駅やウィーン大学のすぐ近くにあるメルカー・バスタイ Mölker Basteiと呼ばれる場所にあります。
ベートーヴェンは1804年秋から8年にわたってその4階(日本でいう5階)に住んでおり、交響曲第4番、第5番、第7番、第8番、歌劇「フィデリオ」などに取り組んだ家として知られています。
やや高台に立っていることもあり、窓からの眺めの良かったこの家をベートーヴェンは気に入っていたようで、避暑や仕事の関係で一時的に別の場所(アン・デア・ウィーン劇場内の部屋など)に住むことがあっても、やがてこの家に戻ってきました。パスクァラティ男爵にも理解があり、戻ってくるであろうベートーヴェンのために、別の人に貸し出すこということをしませんでした。
写真の右側、奥の建物がパスクァラティハウス。1階にベートーヴェングッズなどを売るショップがありますが、博物館としての案内は小さな看板しかありません。(※写真をクリックすると拡大します)
階段を登って、最上階のベートーヴェンが借りていた部屋へ。他の階の部屋は今も一般に使われているようです。普通の家のようなドアを思い切って開けると博物館スタッフの男性が2人おり、チケットを買って部屋の中へ。


楽譜や肖像画などが展示されています。フラッシュを焚かなければ写真撮影OK。内装はベートーヴェン時代そのままというわけではありませんが、複数の部屋がつながっていてなかなかゆったりとした住まいです。
ボンの宮廷歌手だったベートーヴェンの同名の祖父の肖像画と、ベートーヴェンの彫刻。


●参考
Wien Museum – Beethoven Pasqualatihaus
平野昭『ベートーヴェン』(作曲家◎人と作品)音楽之友社、2012年